第13期全人代(全国人民代表会議)での主なトピック

中国のマーケティングにおいて、政府の政策はかなり重要です。それゆえ、年に1回の「両会」、5年に1回の「党大会」、全体会議(特に経済の流れを決める三回目の会議、通称「三中全会」)は特に注目する必要があります。

今年の全人代はコロナウイルスの影響もあり、3月初めの開催が2ヶ月以上も遅れ、5月22日から28日までの6日間の開催となりました。また、会期自体も例年の約2週間から約1週間へと半分に短縮されました。

その中でも、日中関係やビジネスやマーケティングに関わる幾つかのトピックがあるので、全体を俯瞰しつつ、概説していきたいと思います。

会議での強調点は、政治体制の優位性の宣伝。

会議全体の概況としては、新型コロナウイルスの影響もあり、例年出されるGDP目標も出さず、どちらかと言うと中国の政治体制(習近平新時代特色社会主義)の優位性を、海外の政治体制との暗喩で宣伝強化すると言う側面が強く出てました。

そんな中、貧困地域の撲滅(脱贫攻堅)が今年の大きなトピックで、今年中の貧困地域の撲滅が大きな政治目標として挙げられています。

景気対策はやや期待外れ。

新型コロナウイルスに関係する景気対策としては、地方債を3.75億元と昨年の倍以上起債するなどしているが、政府全体(中央+地方)の財政の厳しさを反映し、全体的には異次元の財政出動や大減税を行う動きが見られませんでした(裏を返せば、巷間で言われているように、地方財政が相当厳しい状況にある点が透けて見てとれる)。

消費面ではECの促進を強化。

異次元の財政政策、金融政策が取れない分、政府が音頭を取っているのは消費を促す宣伝活動とその潮流を作り出すことです。

例えばもともと京東が始めた618セールの日だが、本年度の出だしは絶好調で、アリババ系列のショッピングサイト、タオバオのTMALL天猫の売上が開始1時間で前年比515%の予約売り上げで達成するなど、W11独身の日に継ぐ「夏のセールの日」としての地位を確立するのではないかと言う勢いを得ています。

タオバオのTMALL天猫では本年度の618では100億元の商品券を準備
タオバオのTMALL天猫では本年度の618では100億元の商品券を準備

また、農村(貧困地域)への物流を整備し、ECを活用した販売などの宣伝にも力を入れており、とにかく消費を頼りに経済復興を行う方針が明確に出されています。

日本(&韓国)との経済連携は積極的に推進、越境ECも拡大の意向。

本年度のトピックには貿易や外資に関しても言及されており、日韓との経済協力に関しては特に言及されている。経済的に苦しくアメリカとの関係も良好でない事情を反映し、日韓FTAの実施は悲願であり、経済的な協力関係を目標とした日本に対する友好アプローチは当面続くものと思われます。

また、越境ECや国際貨物の推進と言う点も強調されている。ただ国際貨物に関しては、政府宣伝的には陸路の一帯一路に添った形での陸運での西方進出が強調されており、日本に利益が出る形で推進が行われるかは注意が必要です。

(もちろん、実利的に陸路の物流が中国政府の思惑通り機能するのかと言う課題は別途あるので、あくまで政府宣伝では陸路を強調しているに過ぎない点も留意する必要がある)。

香港政治や軍の動き、戦狼外交は不安要素。

香港政治に関しては、中国国内の利権も複雑に絡み合っており読みづらい点があるものの、国家安全法制の方針が採択されたこともり、現時点で中央政府が香港の現状の黙認をし続けることは想定しづらい。一方、香港情勢の現況により、香港の代替として深セン(もしくは上海)の地位が更に向上してくることは避けられず、深センがその地位を更に上げてくる傾向は強まると考えられます。

軍の動きに関しても読みづらく、もうしばらく(恐らく2022年以降)たたないと、中央政府が軍を掌握できたかどうか見えにくい部分があります。

また、中国国内での政治体制の優位性の強調の裏返しとして、「戦狼外交」と言われる海外に対する挑発的な発言や稚拙な外交政策が目に付きました。中国の外交は国内問題に起因するところが大きいので、国内が完全に落ち着きを取り戻すまでは(また国内政治の撹乱要因である国外世論が落ち着くまでは)、対外的に強気な姿勢は当面続くものと思われます。