新型コロナウイルス後の中国人インバウンド旅行の考察

「Analysys易観」の新型コロナウイルス下での中国人旅行者の意識、行動調査。

新型コロナウイルスの影響でストップしていた旅行や観光は、中国では徐々に回復の兆しがあります。

とは言え、海外旅行に関しては出入国の壁があったり、中国人の意識が海外旅行に行ってなかったりで、実上停止状態であり、その回復もいつになるのか想定しづらいところがあります。

そんな中、中国人が旅行の代わりに何にお金を使ったか、 次に旅行に行く場合はどこに行きたいか、その場合はいつ行きたいかなどについて「Analysys易観」が調査を行いました。

その内容についてインバウンド旅行のマーケティングでも使えるような調査結果が出ているので、そこから今後の中国人のインバウンド旅行がどのようになってくるのかという考察を、補足資料なども用いてまとめてみました。

仮説:インバウンド回復期のPR内容は「短期旅行」「安全な親子旅行」「観光地情報+美食」

調査結果の中で、日本のインバウンド関係の組織が使えそうな点を下記にまとめました。

調査結果から、旅行が好きな人はどちらかと言うと文学が好きな知的な人が多く、旅行の代わりに「自己啓発」にお金や時間を費やす傾向が強いということが言えます。

よって「旅行の代わりの代替として「自己啓発」に繋がるサービスや情報(例えばオンラインでの文化体験など)を提供」することは一つのソリューションとしてありえることだと言えます。

実際の旅行に関しては、少なくとも国内旅行に関しては10月の国慶節には前年並みに需要が回復するという結果は出ていますが、長期に渡る海外旅行に対する抵抗感はあるので、日本と言う地の利を生かした(あたかも国内旅行のように)短期に気軽体験できる旅行」ができる点を当面は押し出した方がいいかも知れません。

次に項目に関しては、屋外で皆で楽しむ旅行に対するニーズが強いことから「親子で安全にできる旅行」というのが1つのトピックになってくるかと思います。

また、旅行に向かわせるティザーマーケティング・PRとしては「観光地情報+美食」の効果が高いことが示唆されています。

また、政府がPRや補助金を投入して全面的にバックアップしている「ライブ放送やライブコマースを用いての観光地のPRや集客で好結果を得ている事例」も出てきています。

では、以下内容を順に追って見ていきましょう。

新型コロナウイルスで旅行に行けない中国人は一体何をしているのか?

まずは新型コロナウイルスに対しての中国人の旅行に対する感情についてです。

調査によると、旅行ができなくなったことに対して、 男性より女性の失望が高かったり、ビジネスマンより学生の失望が高かったりといった形で、クラスターによって失望の程度が異なっています。

また、何に対して失望したかという感情面に関しては「旅行の予定時間が無駄になったこと」と「 一緒に行く人との約束がなくなったこと」が失望の原因として挙げられています。

男性より女性、ビジネスマンより学生の失望が高い。
男性より女性、ビジネスマンより学生の失望が高い。

次に旅行ができなくなったことで、 「空いた時間を何に費やしたのか?」という調査結果が出ています。 

最も多かったのは「自炊」で、 続いて「運動」 「オンライン授業」と続いています。

新型コロナウイルスで外出ができないので、外出の必要が少ない項目に時間を費やす傾向が強く出ているのと、どちらかと言うと自己啓発に近いようなところに時間を費やす傾向が見て取れます。

中国人は旅行に行けない時間を「自炊」「運動」 「オンライン授業」
などの自己啓発に費やしている。
中国人は旅行に行けない時間を「自炊」「運動」 「オンライン授業」
などの自己啓発に費やしている。

同様に、旅行に替わって増やした消費に関しては実物に関しては「ファッション」や「美容」や「家電」で、 オンラインサービスに関しては「運動」や「本」や「オンライン授業」と言った結果になっています。ここからも中国の旅行者は「自分事」や「自己啓発」に消費を費やしている傾向が見て取れます。

中国人が旅行の替わりに費やした消費は「ファッション」「美容」「家電」「運動」「本」「オンライン授業」などで自己啓発が多め。
中国人が旅行の替わりに費やした消費は「ファッション」「美容」「家電」「運動」「本」「オンライン授業」などで自己啓発が多め。

とはいえ、次の調査結果のように新型コロナウイルスによって在宅時間が増えていることもあり、消費は「見せびらかし消費」や「衝動買い」はあまりせず、よく考える「理性的」な消費行動を行っているという傾向も見て取れます。

中国人が旅行の替わりに振り向ける消費も「理性的」。
中国人が旅行の替わりに振り向ける消費も「理性的」。

それでは次に、 新型コロナウイルス下での旅行ユーザーの各アプリの使用状況を見ていきましょう。

調査によると7割近いユーザーが経験している「自炊」で最もよく使われているアプリは「下厨房」で全体の約32%となっています。

次の「豆果」が12%なので「下厨房」はダントツで使われているアプリとなっています。

中国人の自炊アプリでは「下厨房」が最も人気。
中国人の自炊アプリでは「下厨房」が最も人気。

運動領域はと言うとエクササイズコンテンツで有名な「Keep」が最も使われているアプリという結果になっています。

次に来るのはウォーキングアプリの「歩多多」で、3位は大学生に人気のあるウォーキングアプリ「悦動圏」となっています。

中国人の運動系では「Keep」が最も人気。
中国人の運動系では「Keep」が最も人気。

では動画に関してはどのような動画を旅行ユーザーはよく見ているのでしょうか。
多いのは「映画」や「ドラマ」や「バラエティー」ですが、旅行ユーザーの特徴として、「アニメ」「美食」「時事」「ドキュメンタリー」などもそれなりに見られているということがデータ上でています。

中国の旅行ユーザーは「アニメ」「美食」「時事」「ドキュメンタリー」
などをよく見る。
中国の旅行ユーザーは「アニメ」「美食」「時事」「ドキュメンタリー」
などをよく見る。

これは最近流行りのショートムービーに関しても同じで、「美食」や「観光地情報」などが比較的よく見られているという結果が出ています。
そのように考えると、 旅行ユーザーはやはり「旅行」に関連したコンテンツへの親和性が高く、インバウンドマーケティングなどで、そのあたりを意識した企画などは効果がありそうです。

ショートムービーに関しても「美食」「観光地情報」などをよく見る。
ショートムービーに関しても「美食」「観光地情報」などをよく見る。

読書に関しては、 小説や文学をよく読んでいるユーザーが多く、旅行が好きなそうというのは「文学的」であるということがいえそうです。

中国の旅行ユーザーは文学に対して興味が高い。
中国の旅行ユーザーは文学に対して興味が高い。

またライブ放送に関しては、インフルエンサーやブランドのライブコマースなどのライブコマースや、 調理関係やグルメレポートなど美食関連の動画の人気があります。

ライブ放送に関してはライブコマースや美食関連の動画が人気。
ライブ放送に関してはライブコマースや美食関連の動画が人気。

国慶節には国内旅行の需要がほぼ戻ると予測。密を避ける景観区やバーベキューなどが人気。

旅行の需要に関しては、中国国内では安全対策などがしっかりなされてきているという現状から、端午節で7割、国慶節で95%回復すると見込まれています。

中国では労働説、端午節を経て、国慶節には96%程度まで
旅行者数が回復する見込み。
中国では労働説、端午節を経て、国慶節には96%程度まで
旅行者数が回復する見込み。

また、旅行の意向に関しては、 「どこかに旅行に行きたい」という需要が高いものの、国外旅行の代替として「周辺」や「国内」での長短期旅行のニーズが強く出ています。これは国外旅行がまだ現実的でなく、国内に比べて不安定な部分への不安が反映された結果だと考えられます。

新型コロナウイルス後は「国内」への旅行ニーズが高いが、
国外はまだ壁がある。
新型コロナウイルス後は「国内」への旅行ニーズが高いが、
国外はまだ壁がある。

また実際の旅行の代替になる「バーチャル旅行(クラウド旅行 : 雲旅行)」に関しての認知度は6割程度あるものの、9割近くの人が「旅行の替わりにならない」と回答しており、 やはり実際の旅行の代替となるにはまだまだハードルが高いという結果が出ています。

「バーチャル旅行」の認知度は6割程度あるが、
旅行の代替としてはハードルが高い。
「バーチャル旅行」の認知度は6割程度あるが、
旅行の代替としてはハードルが高い。

中国で話題の「バーチャル旅行」「バーベキュー」「5A級景観区」「村落旅行」についての調査分析。

そんな中でも、新しい考え方である「バーチャル旅行」でインフルエンサーとライブコマースと活用したマーケティングプロモーションの事例なども出てきています。

例えば、 杭州市文化広電旅行局はトップインフルエンサーの「Viya」を起用し、杭州の文化や観光地を紹介するとともに、杭州の特産品を販売するライブコマースを展開しました。

具体的には「親子、品質、健康」の三つの角度から選んだ杭州の観光地やホテルを紹介し、杭州の特産品をライブコマースしました。

杭州市文化広電旅行局の「Viya」を起用したライブコマース。杭州の観光PR並びに、特産品の販売等を行う。
杭州市文化広電旅行局の「Viya」を起用したライブコマース。杭州の観光PR並びに、特産品の販売等を行う。

結果的に下記のように「杭州」という地名や、「ライブ配信」、「旅行に行きたい」などが話題となっています。

「Viya」を起用した杭州の文化や観光地を紹介。「杭州」という地名や、「ライブ配信」、「旅行に行きたい」などが話題に。
「Viya」を起用した杭州の文化や観光地を紹介。
「杭州」という地名や、「ライブ配信」、「旅行に行きたい」などが話題に。

その他の事例としては広州旅行局がコラボレーションしたキャンペーン「花様游広州」では、20名のインフルエンサーを起用し、ショートムービーを制作と発布を行い3.5億回の視聴数を獲得しました。

広州旅行局はインフルエンサーを用いて3.5億回の視聴数を獲得。
広州旅行局はインフルエンサーを用いて3.5億回の視聴数を獲得。

それ以外にも、例えば上海の観光第一の名所であるお寺の「豫園」や、広州のシンボル「広州タワー」など全国各地の観光名所が618セールの日を境にライブコマースを展開し、その売上増加率は200%近くにもなっているとのことです。

その他、最近話題の「バーベキュー」、「5A級景観区」、「村落旅行」に関しての話題分析も出ています。

まずは「密」を避けるという観点もある人気の「バーベキュー」です。バーベキューに関しては美食や遊び、写真などの相性が良い点が見て取れます。

「バーベキュー」と食や遊び、写真などと結び付けられると効果的。
「バーベキュー」と食や遊び、写真などと結び付けられると効果的。

次に「5A級の景観区」です。5A級の景観区の旅行に関しては、国内で行ったことのない「5A級の景観区」にいきたいというニーズが強く出ています。これは現在中国も国内消費の喚起のために観光地の整備が順次進んでおり、そこでの体験も悪くなかったことから、新型コロナウイルスの影響が安定したのちに訪れてみたいという要求があるからです。

5A級の景観区への関心は高い。
5A級の景観区への関心は高い。

最後に村落旅行に関しては、満足度が高く、現地の生活に溶け込んで旅行したいというニーズが出ています。

現地の生活に溶け込んだ村落旅行への憧れ。

端午節の旅行市場についての速報レポート

端午節の実際の旅行市場についてiresearchが文化旅行部のデータなどからまとめたレポートやC-tripからデータが発表されたので、それを元に端午節の旅行の状況について下記補足します。

統計によると端午節の三日間の休みの全国の国内旅行者は4880.9万人で、前年同期比の50.9%、旅行収入は122.8億元で前年同期比の31.2%となっています。

その主な旅行内容は、自家用車での旅行であったり都市周辺の旅行であったりでした。

地元の旅行と省内の旅行がそれぞれ46.3%と39%となり、省外や海外への旅行は20%に見たない数字でした。

もちろん新型コロナウイルスの影響だけではなく、端午節の休み自体が三日間しかないとう事情もありながら、比較的安全に思われる近場での短距離の旅行が選択されたという背景があります。 

また、政府の政策が定員の30%以内の観光客しか受け入れず、予約を必須にしているといったことも、まだ旅行の本格回復にまでいかないという事情に影響していると思われます。 

またC-tripによると、ホテル予約や交通予約の数が5月の労働節に比べて10%以上増加しており、飛行機の予約に関しては70%まで回復したとのことです。

旅行商品に関しては、特に「端午節の民俗旅行」「キャンピングカー」「散策」「ハイエンドな親子旅」などの商品の販売が好調だったとのことです。

C-trip「2020端午旅游市场大数据报告」より。

上記のように中国の国内旅行においては新型コロナウイルスからの回復傾向が見られ、10月の国慶節にはおそらく旅行の人数的には前年に近い形で回復する傾向が見て取れますが、それに関しては海外旅行の代替としての近郊への旅行だったり、屋外旅行が中心となるなど、今までと違う形での旅行になってくるということがいえそうです。

これは中国からの海外旅行が解禁されてからもおそらく似たような傾向になると思うので、このあたりのトレンドを掴みながらインバンド旅行の回復に向けた企画を練っていくのが良いでしょう。